会社を設立するためには、その会社が一体なにをしているのかというのを明記しなければいけません。
それが「事業目的」です。
事業目的は会社の基本事項の1つであり、必ず決める必要があります。
一見簡単そうですが、文字で記載するとなると実は結構難しいです。
また、事業目的にはいくつか考慮すべきポイントがあり、それらを抑えた上で決めていく必要があります。
今回のブログでは、実際に事業目的を決める際のポイントなどについてお話していきたいと思います。
目次
事業目的の3つの大前提
決める際のポイントをお話しする前に、事業目的の3つの大前提についてお話しします。
この3つに反するものは、事業目的とすることはできませんので注意しましょう。
適法性
読んで字の如く、法律に違反しない範疇で定めなければいけません。
また、公序良俗に反するものも、目的にすることはできません。
- 麻薬の製造及び販売
- 売春の斡旋
- 暴力団系組織の紹介
このような事業目的を定めることはできません。当然ですね。
明確性
事業目的は、第三者が見てもなんの仕事か明確に分かる必要があります。
専門用語だけでなく、分かりやすい言葉使いを心がけましょう。
また、「飲食店の経営」とだけ記載するのではなく、詳細が分かるように具体的に複数記載するように心がけましょう。
営利性
株式会社や合同会社のように、営利を目的とする会社の場合、利益が出る事業を必ず目的に定めましょう。
ただし、利益が出る事業目的の中に「ボランティア活動」のような非営利の目的を入れることは可能です。
事業目的を決める際の7つのポイント
それでは、実際に会社の事業目的を決める際のポイントを1つずつ見ていきます。
ポイント1|一度決めた目的を変更する場合はお金がかかる
まず前提として、一度会社を設立した後に改めて事業目的を変更する場合、登録免許税として3万円かかります。
また、目的変更のためには以下のような手続き(株式会社の場合)を踏みます。
- 株主総会を開催して特別決議により定款変更の決議を行う
- 定款変更の効力発生
- 本店所在地の法務局で事業目的変更登記の手続きを行う(←登録免許税3万円)
会社の規模拡大による変更はよくある話ですが、ミスによって後々変更するようなことはないように注意しましょう。
ポイント2|目的に定めていない事業はできない?
基本的に、事業目的に定められてない事業を行うことはできません。
「飲食業」としての事業目的を定めているのに、マッサージ店の経営をしていたりすると取引の信用上大きな問題が発生する可能性があります。
違反したからといって、法的に罰則があるわけではありませんが、事業目的を定める際は注意しましょう。
ポイント3|1つ目にメインとなる事業を
基本的に事業目的は、1つずつ順に記載していきます。
1.○○○○
2.○○○○
3.○○○○
なので、1つ目の事業目的には、会社のメインとなる事業を定めるようにしましょう。
一般的に、1つ目の事業目的がメインの事業だと認知されることになります。
ポイント4|許認可が必要な業種か
「派遣会社」や「飲食店」など、許認可が必要な事業の場合、その許認可に沿った事業目的を記載する必要があります。
業種ごとの具体例は以下の通りです。
- 派遣会社:労働者派遣事業
- 飲食店:飲食店の経営
- 旅行会社:旅行業法に基づく旅行業及び旅行業者代理業
許認可が必要な事業の場合、事前に必ず確認しましょう。
ポイント5|将来する可能性がある事業も記載しておく
事業目的は、基本的に何個でも記載することができます。
上記でも述べた通り、目的を後で変更するのはお金がかかります。
そして、事業目的に記載がない事業を行うことはできません。
ですので、予測できる限りで、将来的に可能性がある事業についても目的に定めておくようにしましょう。
ポイント6|でも不自然に多すぎないように
事業目的は何個記載してもよく、仮に、記載した事業目的を行わなかったとしても特に問題はありません。
大企業などは、事業目的が20個以上なんてこともザラにあります(゜゜)。
ですが、創業間もない会社の場合、不自然に事業目的が多いと逆に信用が失われてしまいます。具体的な会社の実態がつかめなくなるためです。
融資を受けたい場合などは最高でも10個前後に留めておくようにしましょう。
ポイント7|最後に「前各号に附帯する一切の業務」を記載
事業目的を一通り記載し終えたら、最後に「前各号に付帯する一切の業務」という一文を目的に加えます。
事業目的のテンプレ文ですが、この一文を入れることで事業目的にない行為も、関連性があれば事業の範囲内として行うことができます。
有名企業の事業目的
最後に、実際の有名企業の事業目的を見てみましょう。
ソフトバンク株式会社
1.電気通信事業
2.電気通信市場および技術に関する市場調査、情報収集および調査研究ならびにその受託
3.電気通信設備およびこれに付帯する設備の工事およびその請負
4.電気通信設備の保守業務の受託
5.電気通信設備およびそれに付帯する設備の開発、保守、販売および賃貸
6.電気通信事業法による通信事業者の代理店業務
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24.広告代理その他広告に関する事業
25.広告宣伝およびセールスプロモーション企画・立案ならびにその受託
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55.前各号に付帯または関連する一切の業務
56.その他一切の事業(計56個)
ソフトバンクの事業目的は、現在なんと56個です。
さすが日本を代表する企業といったところですね(゜゜)。
任天堂株式会社
1.トランプ類の製造および販売
2.娯楽用具、運動具、音響機器および乗物の製造および販売
3.事務用機器および事務用品の製造および販売
4.教材、育児用品、家庭用品および電気用品の製造および販売
5.印刷、出版および紙製品の加工および販売
6.合成樹脂、金属および木製品の加工および販売
7.ゲーム、映像および音楽等のコンテンツの制作、製造および販売
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20.知的財産権の許諾
21.前各号に付帯関連する一切の事業(計21個)
出典:任天堂株式会社 定款
任天堂といえばゲームのイメージですが、事業目的でゲームが出てくるのは7つ目です。
1つ目がトランプ類の製造・販売というあたりに、任天堂の成長の歴史を感じます。
まとめ
いかがだったでしょうか。
いざ文字にするのが難しい事業目的ですが、同業他社のものを参考にしたりで決めていきましょう。
また、有名企業の例のように、行く行くは会社の成長の軌跡ともなります。
適当ではなく、目的1つ1つ思いを込めて考えるようにしましょう。
終わり。