こんにちは、カミノです。
株式会社を設立する際、定款に必ずと言っていいほど記載すべき事項が株式の譲渡制限についてです。
中小企業のほとんどはこの株式譲渡制限を付けています。
恐らく、付けてはいるけど詳しくはよく分からないという方が多いのではないでしょうか?
しかし、経営者となる以上、自分の会社のルールについてきちんと把握しておく必要があります。
ということで今回は、株式譲渡制限とは一体どのようなものか詳しく解説していきたいと思います。
目次
株式譲渡制限とは
まず、株式譲渡制限とは一体なんのことかお話していきます。
株式譲渡制限とは
株式譲渡制限とは、その名の通り「株主が持っている”株”の、他人への”譲渡”を”制限”する」ことです。
会社法では、株式譲渡自由の原則というのが定められており、本来株主は合意の上で自由に他人に株を譲渡することができます。(このような会社を公開会社といいます。)
しかし、株の譲渡が行われるということは、譲渡された人が新しく株主となるので、赤の他人が会社の経営に参加するということになります。
こういった事態は、中小企業にとってあまり望ましくない展開であり、その防御策となるのが株式譲渡制限です。
株式譲渡制限を定款に定めることにより、株を第三者に譲渡する場合に株主総会などの承認を得ることが必要になります。
第三者の介入を完全に防げるわけではない
株式譲渡制限会社の株主が第三者に株を譲渡したい場合、以下のような手順を踏む必要があります。
- 会社に対して「株式譲渡承認申請書」を提出
- 承認されない場合、会社または会社の指定買取人に株の買取請求を行う
- 会社は40日以内に買い取る旨を株主に通知
買い取りの際の株の金額は株主と会社との協議の上で決定し、決まらない場合は裁判所に価格決定の申し立てを行います。
というように、第三者への譲渡を阻止するためには、会社や指定買取人が代わりにその株を買い取らなくてはいけません。
株式譲渡制限があろうと、買い取りができなければ株は第三者の手に渡ることになります。
株式譲渡制限は完全ではないということを、一応頭に入れておくようにしましょう。
株式譲渡制限を付ける4つのメリット
続いては、株式譲渡制限を付けることで得られる「譲渡を制限する」以外のメリットをご紹介します。
役員の任期を2年→10年に延長できる
通常、取締役の任期は2年と決まっており、その都度再選や変更登記が必要になります。
しかし、株式譲渡制限のある会社では、取締役の任期を最長10年まで延長することができます。
これにより、手続き等の事務面と登録免許税による金銭面での負担を大きく削減することができます。
取締役会・監査役の設置が不要に
公開会社の場合、会社の期間設計で取締役会の設置が義務付けられています。
しかし、株式譲渡制限のある会社では、取締役会の設置が義務ではなくなります。
結果的に監査役の設置義務もなくなるので、経営における権力構造をより安定させることができます。
株主総会の召集手続を簡略化できる
通常、株主総会を開催する場合は、開催日の2週間前までにメールまたは書面で株主に通知しなくてはいけません。
しかし、株式譲渡制限のある会社では、開催日の1週間前までに通知すればよく、口頭での通知も認められています。
中小企業にとって、形式ばった手続きは手間以外の何物でもないので、簡略化は大きなメリットになります。
売渡請求権を行使できる
株式譲渡制限のある会社では、定款に定めることで株式の売渡請求権を使うことができます。
売渡請求権を使えば、例えば株主が亡くなって相続人に株式が渡ってしまう、などのことを防ぐことができます。
株式譲渡制限は定款の相対的記載事項
株式譲渡制限は、定款の相対的記載事項になります。
最後に、定款への記載方法をご紹介します。
記載の仕方によって、承認を行う機関を変えることができます。
承認する機関を株主総会にする場合
承認する期間を株主総会にする場合、定款には以下のように記載します。
(株式の譲渡制限)
第〇条 当会社の株式を譲渡するには、株主総会の承認を要する。
しかし、株主総会にしてしまうと決議に時間がかかってしまうのであまりおすすめできません。
承認する機関を取締役会にする場合
続いて、取締役会で承認する場合、定款には以下のように記載します。
(株式の譲渡制限)
第〇条 当会社の株式を譲渡するには、取締役会の承認を要する。
株主総会の部分を取締役会に変更するだけですね。
しかし、上記のメリットの通り、株式譲渡制限会社は取締役会を設置する義務がないので、こちらもあまりおすすめできません。
承認する機関を代表取締役にする場合
最後に、代表取締役が承認する場合の定款への記載方法です。
(株式の譲渡制限)
第〇条 当会社の株式を譲渡するには、代表取締役の承認を要する。
結果的に、代表取締役にしておくのが一番手間がかからずおすすめです。
後々揉めないために株主が複数いる場合、会社設立の際にきちんと話し合っておきましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
知らなくても平気といえば平気ですが、経営者になる以上しっかりと仕組みを把握しておきたいことの1つになります。
会社設立の際は、司法書士さんなど専門家にしっかりと聞いておきましょう。
終わり。